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アコヤ貝の精子を凍結保存する技術を開発しました

(平成18年3月2日発表)

三重県科学技術振興センター水産研究部では、三重大学、近畿大学及び三重県栽培漁業センターと共同して、凍結保存技術を用いたアコヤ貝の新しい養殖システムを開発するために、精子や外套膜(※)等の適切な凍結保存条件の解明に取り組んでいます。

このたび、研究の成果としてアコヤ貝の精子の適切な凍結保存条件や、凍結精子による受精条件を明らかにし、実用化に大きく踏み出しました。

※ 貝殻と真珠層を作り出すアコヤ貝の組織のことを言い、外套膜を小さく切り出した切片を外套膜片(ピース)と言います。真珠を作るには、アコヤ貝の体内に核と外套膜片を挿入する手術を行います。また、ピースを取るアコヤ貝のことをピース貝と言います。

1 研究に取り組んだ背景と目的

近年、真珠養殖の母貝となるアコヤ貝には、病気対策として日本産貝と外国産貝を交配して生産された貝の使用が広まり、純粋な日本産貝が急速に失われつつあるため、の日本産貝の遺伝子資源(※)としての保全対策が求められています。

また、アコヤ貝の種苗生産機関では、親となる貝(系統)を保存するために継代して飼育していますが、その作業には多大な労力や費用が必要となるうえに、有害な赤潮や貧酸素によるへい死の危険がつきまといます。そのため、系統を保存するための作業の省力化が求められています。

そこで、これらの課題の対策として、液体窒素を用いたアコヤ貝の精子等の凍結保存技術の実用化にむけて研究に取り組みました。

※ 様々な生物の遺伝子は、独自の機能を持つものが多く、それらは医学や生物工学の分野において人類や産業に有用なものとなりえることから、遺伝子を資源として位置づける考え方に基づく言葉。

2 研究内容と実施機関

本研究の内容は、精子、受精卵、胚(幼生)、外套膜の凍結保存法の開発であり、以下の通り4機関で業務を分担して行っています。研究期間は平成16-18年度の3年間です。

  1. 精子の凍結保存:    近畿大学
  2. 受精卵、胚の凍結保存: 近畿大学、三重県科学技術振興センター
  3. 外套膜の凍結保存:   三重大学
  4. 幼生の能力評価:    三重県栽培漁業センター

3 研究成果

(1)アコヤ貝の精子の適切な凍結保存条件の解明

凍結保存の重要な条件である、凍害防御剤(※)の種類と濃度、保存溶液の組成、冷却する速度等を明らかにしました。

(2)凍結した精子による受精条件

凍結しない精子と同等の受精率を得るのに最低限必要な凍結精子の量を明らかにしました。また実際の種苗生産にむけて精子の保存に用いる容器の最大の容量を明らかにしました。

※凍結の過程において細胞内での氷結晶の形成をおさえるために保存溶液に添加する物質のことを言います。細胞内で氷結晶が形成されると、その成長に伴い細胞は致命的な損傷を受けます。

4 期待される効果と今後の取組

本研究の成果により、アコヤ貝の精子等を長期間安定して保存することが可能となります。この技術を用いることで、貴重な日本産のアコヤ貝を精子や卵等の細胞レベルで保存することや、種苗生産に必要な親貝の飼育管理作業の省力化・低コスト化が図れるとともに、優良なアコヤ貝の精子・卵を収集保存することにより優良種苗を安定して生産できる可能性が開けます。

また、確立された優良なピース貝の系統の外套膜を保存することで、真珠の挿核作業の効率化や品質の向上が図れることが期待されます。

今後の研究の取組としては、精子以外の外套膜、受精卵、胚について、適切な凍結保存条件の解明を進めます。また、精子の凍結保存では、より簡便で大量の卵に人工受精できるよう、保存容器の形状や人工受精方法について改良を加えます。

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